ペンシルヴァニア大学留学体験記②

私は研究室が提供している留学プログラムを利用して、アメリカのフィラデルフィアにあるペンシルベニア大学に、約4か月間留学をしました。フィラデルフィアは独立宣言の起草が行われた都市で、ペンシルベニア大はその起草委員の一人ベンジャミン・フランクリンによって創立された伝統のある大学です。そこで私は研究対象であるカズオ・イシグロについての資料を収集しながら、現地の学生に交じって授業を受けました。イシグロは、映画やテレビドラマが娯楽の主流となった現代において、それら映像芸術との差異化を図るため、散文芸術にしかできないものを表現することに非常に意識的な作家の一人です。イシグロを研究する上で、兼ねてからアダプテーション論に興味があったので、小説と映画との関係性を取り上げた授業を受けました。講義は基本的に、ディスカッションやグループワークを中心とした学生主体のもの。積極的に自分の意見を発表し、ディスカッションに参加することが求められます。学生が主体的に考え、自分の意見を持ち、それを論理的に説明することを重視しているため、自分の興味や関心、疑問点などに意識的になれるのです。また今回の留学でアメリカの空気を肌で感じたことで、文学作品は、作品が生まれた風土と切り離すことができないということを改めて実感しました。大阪大学の英米文学専修では、詩や小説、戯曲などの文学作品を英語で読み理解することを目指していますが、本当に「理解する」ためには、英語の読解能力だけでなく、作品の背景である歴史や文化、思想や価値観を理解することが重要です。これらの知識を書物から得ることも可能ですが、実際に日本の外に出て、現地の生の文化に触れたことから研究のインスピレーションを受けることも大いにあるでしょう。異文化を書物による体験と生の経験との両方から吸収し、自己の視野を広げる貴重な機会を英米文学専修は提供しています。

(中嶋彩佳、2016/03)

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